ステビアの安全性については、これまで30年にわたり多数の大学、及び研究機関 で評価・確認されております。平成8年度厚生科学研究報告書「既存添加物の安全性評価に関する調査研究、及び平成13年11月に開催された「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性・添加物合同部会」において様々な医薬分野の専門家により評価が行なわれ、ステビア甘味料には発ガン性などの毒性が無いことが重ねて確認されております。
2008年6月17日~26日にイタリアのローマで開催された第69回JECFA会議において、ステビオール配糖体(ステビア抽出物)の追加データ(タイプⅡ糖尿病患者、通常血圧・低血圧者の摂取試験)の評価が行われ、ステビオールとして0~4mg/kg bw per dayのADIが設定されました。
これらの追加試験データに副作用が認められなかったことから、従来の長期試験データがそのまま採用されました。(これまでADIは、暫定で1/2が乗じられていました)
この結果、正規ADIはステビア甘味成分に換算すると、ステビオサイドで10mg/kg bw per dayに相当し、また体重50kgの人が1日に摂取する砂糖量に換算すると約100gに相当することになります。
ステビアには妊娠毒性はありません。誤解を与えたのは1968年にウルグアイの学者プラナスの「ラットにステビアエキスを投与したところ、妊娠率の低下が認められた」という報告が雑誌「サイエンス」に掲載されたことに起因しています。
実際に市販されているステビア甘味料はエキスではなく、精製された高純度のものであり、ステビアエキスとはまったく組成の異なるものです。
なお、プラナスの試験はその後追試が試みられてきましたが、再現性が得られないばかりか、試験条件の信憑性に疑問が投げかけられております。
1.急性毒性試験
ステビオシド(経口)のLD50はマウス、ラット、ハムスターで8.2g/kg以上であり、ステビオシドが低毒性であることを示しています(3)。
2.変異原性試験
Ames試験・小核試験・コメットアッセイ
ステビオールの変異原性試験ではIn vitro前進突然変異試験等の代謝活性化のケースにDNA損傷性及び染色体異常が報告されていますが、In vitro のAmes,DNA修復試験,、及びIn vivoのマウス、ラット、ハムスターの小核試験でいずれも陰性の結果が出ています(Table 1)。
また高感度の変異原性試験であるコメットアッセイ(多臓器アルカリSCG法)をIn vitro 1機関、In vivo 3機関で実施しました(22)。In vitro試験はステビオールについてヒトリンパ芽球細胞株を用いて行い、代謝活性化系の有無に関わらずステビオールはDNA損傷誘発性を示しませんでした。In vivo試験では、2機関で実施したステビオール2例、ステビア抽出物(市販品)1例のマウスへの500,1000,2000mg/kg投与は、試験した臓器すべてでDNA損傷性を示しませんでした(22)。一方、ステビオールを用いた1機関の試験では1臓器(結腸粘膜)に弱い陽性反応が認められました。しかし、他の2機関では同一臓器で陰性である事、国内外の小核試験で陰性の結果が出ていること、発がん性試験においても がん原性が見られないこと等から、最終的に、肝臓、腎臓、結腸等試験した臓器いずれにおいてもDNA損傷性を示さない、あるいは示すとしても問題となるものではないことが確認されました(平成13年11月、「薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会 毒性・添加物合同部会」)(21)。
3.繁殖毒性試験
繁殖毒性では明石ら、森らがラットで、YodyingyuadVらがゴールデンハムスターを用いてそれぞれ試験し、妊娠率、交配率等に影響の無いことを報告しています(Table 2)。
4.亜急性/慢性毒性/がん原性試験
慢性毒性、がん原性については山田ら、L.Xiliら、豊田らがそれぞれ2年間に渡る試験を実施し、いずれも明確な毒性作用なし、発がん性を認めないと報告しています(Table 3)。酵素処理ステビアについては13週間、5%混餌投与試験(亜慢性毒性試験)で、毒性と思われる所見なしと報告されています(Table 3)。
5.催奇性試験
催奇形性では宇佐見らがステビオシドを用い、Wasuntarawatらがステビオールを用いて試験し、ステビオシド、ステビオールに催奇形性作用の無いことを報告しています(Table 4)。
6.代謝・吸収試験
試験したすべての配糖体甘味成分(ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドC、ズルコシドA)は配糖体のままでは腸内では吸収されず、腸内細菌叢によって徐々にアグリコンであるステビオールに分解され吸収されること、またステビオールは最終代謝物で、これ以外の代謝物は生成せず、さらにステビオールはヒト肝臓においてほとんど代謝を受けないことが報告されています。同様に、酵素処理ステビアも、元のステビア抽出物に戻り、その後はステビア抽出物と同じ経路をたどって吸収・代謝されることが報告されています。
(ア)ステビアのヒト腸内細菌叢代謝試験
小山らがプールヒト糞便で種々のステビアサンプルをインキュベーションし、被検物質の減少と生成物の同定、及び変化を調べ報告しています(23)。ステビオシド、レバウジオシドAをそれぞれ別々にインキュベーションすると0.2mg/mL濃度では24hrで完全に消失し相当するステビオールの生成が見られました。4成分混合物(ステビオシド、レバウジオシド A、レバウジオシドC、ズルコシドA)のインキュベーションではステビオシドは0.2mg/mLでは8hrで消失し10mg/mLでは24hrで消失しました(Fig1)。
一方レバウジオシドAは0.2mg/mLでは24hrで消失しましたが10mg/mLでは24hr経てもほとんど変化しませんでした(Fig1)。レバウジオシドCは糖の分岐構造がレバウジオシドAに似ていますが0.2mg/mL 10mg/mLの両方とも24hrで完全に消失しプールヒト糞便ではステビオシドに近い分解を受けることがわかりました。ステビオールをプールヒト糞便でインキュベーションした場合、24hr後も変化が無くステビオールはヒト腸内細菌叢で代謝を受けないと考えられました(Fig2)。 種々のステビアサンプルのヒト腸内細菌叢での判明した分解経路は以下の通りです。ステビオシドは13位に結合したソホロシル基の末端の糖(グルコース)が切れ、ルブソシドが生成し、その後は2つの径路、一つは13位の残りの糖の分解、また一つは19位のエステルの加水分解を経てステビオールへ分解します。 レバウジオシドAの場合には主たる分解径路はステビオシドを経由する径路であり、またマイナーな径路としてレバウジオシドBを経由する径路があります(Fig3)。 α―グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビアの場合には、新たに付加した糖は容易に外れ元のステビオシド、あるいはレバウジオシドーAに戻り、その後は既に示された径路でステビオールへ分解します(Fig4)。
(イ) ステビオールのin vitro肝代謝試験
小山らはステビオールのヒト肝ミクロソームにおける代謝を調べるとともに、ラット肝ミクロソームでの代謝と比較し、ヒトとラットでは肝ミクロソームにおける酸化代謝の定性的なプロフィールにほとんど種差は認められないこと、活性値はヒトの方がラットに比べて極めて低いことを報告しています(24)(Fig5)。
(ウ)ステビアのラット小腸における吸収性検討-In 反転腸サック法による吸収性評価
小山らはラットの反転腸を用いてステビオールと4成分混合物の腸管膜の透過性を試験し、ステビオール、コントロールに用いたサリチル酸は容易に腸管膜を透過するが、4成分混合物はほとんど透過しないことを報告しています(24)。
(エ)ステビアのラット小腸における吸収性検討
-ステビアのラット小腸に経口投与した時の門脈血漿中ステビオールの分析-
小山らはラットに経口でステビオール、4成分混合物を投与して門脈血漿中ステビオールを調べ、先の(ア)、(ウ)のIn vitroの結果をIn vivo の系で検証・確認しています(24)。